はとむぎの歴史



■はとむぎの健康食としての歴史

中国では約2000年前には種植されたと言われており、中国を始め東南アジアでは非常に古くから食用に栽培されていた事がわかっています。この頃はハトムギを炊いたり、お粥や団子にして食べたりしていたようですし、後には産後の回復食として食べられていたようです。美容効果も知られていたようで、宮廷料理の材料にされていました。



ハトムギの種子を脱穀すると薏苡仁(ヨクイニン)となり漢方薬はヨクイニンの事を指しています。脱穀前のハトムギは主に焙煎しお茶として利用されています。日本では健康食品として販売されているのはハトムギであり、漢方薬として販売されているのはヨクイニンで、同じ物なのですが名前が異なるのです。





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■ヨクイニンの効果・効能


ヨクイニンは中国の最古の薬物書として有名な「神農本草経(シンノウホンゾウキョウ)」にも「上薬」として紹介されていますし、漢方の古典である「本草綱目(ホンゾウコウモク)」にも記載があります。





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■神農本草経


ヨクイニンは中国医学三大古典の一つである「神農本草経」(後漢の時代:約2000年前)に上薬として記載があります。神農本草経は一年の日数に合わせた365種の薬物が記載されており、上薬、中薬、下薬(上品(ジョウホン)、中品(チュウホン)、下品(ゲホン))に薬効ごとに分類されています。

漢方では薬効のある植物、鉱物、生物を本草と呼び、その効能を記述した本の事を本草書と呼びます。神農本草経の神農とは中国の伝説上の人物で農耕と医学の祖とされています。その神農さんが編集した本草書ということで神農本草経と呼ばれています。神農本草経は本草書の中でも最古の書物で原書は現存しませんが、後世の本草書は原書の記述を残し、注釈を付ける方法で残されているため原文が残されており中国や日本において度々復元されています。なかでも日本の江戸時代の学者である森立之によって復元された神農本草経の信頼度が高いとされています。

神農本草経において上薬は「上薬一百二十種為君、主養命以応天、無毒、多服、久服不傷人、欲軽身益気、不老延年者、本上経。」と書かれており、これは無毒であり、多く服用しても害がなく、体を軽く、気を充実させ、老ける事がないという意味です。
中薬、下薬になると副作用があったり、有毒成分を含む本草が紹介されており、保健もしくは予防的な薬物が上ランクに、治療薬が下ランクに位置しています。上薬は現代でいう健康食品に相当する本草といえるでしょう。
これらの薬物は五味(酸、苦、甘、辛、鹹)と四気(寒、熱、温、涼)に分類されており、
ヨクイニンは上薬の33番目に記載されていて「甘・微寒」で、体を軽くし元気を増し、痛みやしびれを取る作用があるとされています。





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■神農本草経のヨクイニンの記述


「薏苡仁 一名解蠡。味甘微寒。生平澤。治筋急拘攣不可屈伸。風濕痹。下氣。久服輕身益氣。其根下三蟲。」(中国語原文まま)

訳:解蠡ともいう。味は甘く気は微寒。筋肉の引き攣(ツ)り、手足の痙攣(ケイレン)、屈伸(クッシン)運動ができない、痛みやしびれ等の病を治す。滞った気を下す。継続して服用すれば体が軽くなり、気を益す。根は蛔虫(カイチュウ)、蟯虫(ギョウチュウ)、赤虫の三虫を下す。





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■本草綱目


また中国薬学の大書である「本草綱目」(1596年)にも記載されています。本草綱目はヨーロッパでもよく知られ薬学研究の原典ともいうべき大書です。1604年には日本に到来しており動植物の形態などの博物誌的既述が優れている点が日本人にも影響を与え、たびたび輸入されるとともに、和刻本も続出し幕末に至るまでの基本書とされていた程重要視されていた文献です。
「本草綱目」でヨクイニンは「脾を健やかにし胃を益す。肺を補い清熱する。風を去り湿に勝つ。」とされており、今日の漢方薬の処方でも消炎、利尿、鎮痛、排膿、強壮薬として利用されています。





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■大和本草


江戸時代の医師である貝原益軒の「大和本草」にもハトムギはニキビによいと紹介されていますし、イボとり効果もよく知られていたようです。特に子供に多い水イボの民間治療にはヨクイニンの服用がよいとされています。

神農本草経や本草綱目などの古い書物にはヨクイニンは脾の働きを良くする、気を益すなどへの効果が紹介されていますが、美肌効果、イボ取りの効果は書かれていません。もしかするとイボ取り効果は日本人が見つけた作用なのかもしれません。

ハトムギの効能に利尿作用がある事が知られています。この利尿作用が本草綱目でいうところの「湿に勝つ」という部分になります。漢方では体内の余分な水分は関節痛などの痛みを増したり、毒素の排泄を妨げる働きがあるとされています。ハトムギにはその余分な水分の排泄を助け尿の出をよくし、腎臓の働きを助けることで気や血の巡りをよくし、痛みを和らげてくれるのだということです。


デトックスという言葉を聞いたことがあると思いますが、これは体内の毒素を排泄する事が健康への近道であるとの考え方です。非常に合理的なこの考え方は実は何千年も前から知られ実行されていたのです。便秘症の人はお肌も荒れやすく、水分過剰な人は水溶性の毒素の排泄がうまくいっていない事が多いのでやはり内臓への負担や痛みが伴う傾向が見られます。ハトムギには食物繊維が豊富にあり便秘改善に役立ち、また強い利尿作用が尿の排泄を助けデトックスをしてくれるのです。





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